製造業における生成AIの活用

製造業界の未来に向けて、今日からできること

デスクに座りコンピューターでコーディングをする男性

人工知能(AI)は現在、様々な分野で活用されていますが、私たちはAIがもたらしうる価値の、ほんの一部に接しているに過ぎないと専門家は言っています。AIの成長の可能性、リスク、将来性を、もはや無視することはできません。中でも、大きな商業的進出を果たしているのが生成AIです。文章の作成からコーディング、分析まで、生成AIはあらゆるところに普及しています。 

生成AIとは一体何なのか、どのように活用できるのか、またその課題について、イントラロックスのサービス/カスタマーエクスペリエンス部門の研究開発マネージャー、Jason Lagneauxに話を聞きました。

生成AIとは? 

生成AIの可能性を紐解いていく前に、生成AIとは何なのかを理解することが重要です。端的に言うと、生成モデルを使ってテキストや画像、動画、コードといった新たなコンテンツを生み出すのが生成AIです。これらの生成モデルは幅広い素材を対象にトレーニングされ、パターンを発見し、根底にあるパターンから新しいコンテンツを生み出します。 

「何十億ものデータポイントを受け取ってモデルをトレーニングするのがAIの部分集合です」と、Lagneauxは説明しています。「ここではテキスト生成を取り上げますが、テキストベースの生成AIは数千億もの言葉をデータセットとして受け取り、モデルを作成します。このモデルが実際の言葉のパターンとなり、これがデータ上でトレーニングされて、創作を始めるためのベースモデルになります。」このベースモデルが、ユーザーによって予めインプットされた内容やプロンプトと組み合わせられ、新しい作品のタネとなるのです。 

製造業における生成AIの可能性 

テキストベースの生成AIの実際の用途は、こうしたツールがアクセスできるモデルを考えるとほぼ無限です。レシピから詩の創作まで、テキストベースの生成AIにできることは数多くあります。しかし、製造業ではどのように活用できるのでしょうか? 

生成AIが良きにしろ悪しきにしろ両方の側面で混乱を生じるであろうことに疑いの余地はありません。最大の未知なる点は、起こり得る変化の速さです。もし変化があまりにも速い場合、望ましくない混乱が生じる可能性があります。

Jason Lagneaux
Jason Lagneaux
イントラロックス、サービス/カスタマーエクスペリエンス部門研究開発マネージャー

「多くの企業のステークホルダー(利害関係者)が明らかにしようとしているのがそこだと思います」と、Lagneauxは語っています。「製造業界におけるあらゆる役割、例えば翻訳や、文章作成補助、トラブルシューティング、拡張型学習ツールの構築、自動化コントローラーをプログラミングするエンジニアの補佐など、生成AIはさまざまな領域の生産性を向上させて、価値を創出します。」 

これは、仕事の完成度の向上、生産性の強化、プロセスの最適化、チーム能力の拡大を意味するかもしれません。つまり、生成AIは職能上の枠を超えたチームと個人に、実質的な時間とお金の節約の可能性をもたらすのです。 

新しい技術導入のリスク 

ポストインターネット時代では、グローバルメディアと組み合わせられた技術の進歩により、前世代よりも早く、新しい技術が一般の人々にもたらされています。これはワクワクすることで、AI、特に生成AIの世界では、ツールとのやり取りがすべてAIの改善に繋がるという点でも、非常に刺激的です。これは、私たちの誰もが貢献し、改善を見届けることができる環境、エコシステムです。しかし、自分の知的財産(IP)を共有したくない場合はどうすれば良いでしょうか?より大きな利益のためであっても、競争相手の手助けとなるような場合は?

生成AIの利用者のほとんどは、プライベート、仕事の両方で生成AIツールを使っています。Lagneauxも日常的に生成AIを利用しています。ウェブサイトのチャットボットやソーシャルメディアのアルゴリズムでお馴染みのように、AIは決して新しいものではありませんが、アカウントを持っていれば誰でもアクセスできる生成AIはまさに新しい技術です。これが企業にどのようなリスクや課題をもたらすのでしょうか?

知っていましたか? KPMGの2023年6月のレポートによると、 製造業の役員を対象に行った調査で、78%が生成AIを「新たに出現した技術第1位」に選びました(3月時点では67%)。

「特にビジネスにおいていえることですが、新たな技術に対するリスクと利益の分析が重要です」とLagneauxは語っています。「我々はまだ生成AIを活用し、何ができるのかを探る初期段階にいるため、常にチームで学び、リスクを明らかにしています。課題の1つは、人々の生成AIに対する認識です。つまり、AIを快く思わない人がいるとして、それにどう対処し、どういう用途を見つけるかということです。混乱を招く可能性が大きいだけに、こうしたツールを研究する必要があります。ただし研究は、モラルを重んじ、人を大切にし、我々のビジネス哲学に基づいたやり方で進める必要があります。」

研究には独自の挑戦が求められ、リスクに対する細心の注意と配慮が要求されることを覚悟しなくてはなりません。「生成AIを最大限に活用するには、これまで以上にテック企業を信頼し、自社の知的財産を委ねる必要があります。」と、Lagneauxは説明しています。「知的財産が誤って共有されてしまうリスクはあります。我々は、ベースモデルが少数の、場合によっては新規の実績のないテック企業によって提供されることを理解しています。課題となるのは、その新たなリスクと新たな(願わくは大きな)利益をどう天秤にかけるか、ということです。」 

自動搬送分野における生成AI 

Lagneauxは、生成AIが職場環境、とりわけ自動搬送分野にもたらす可能性について次のように説明してくれました。 

「通常、ラダーロジックを使ってプログラマブルロジックコントローラ(PLC)で作業する制御系エンジニアは、すでに生成AIを使っています」と、Lagneauxは語っています。この仕事はテキストベースのため、生成AIツールで作業が簡素化されるのです。「将来的に、こうしたツールを使わないことなど想像できません」と、Lagneauxは続けます。「使わなければ、同僚のように早く正確な仕事ができず、競争に勝てません。」 

彼は生成AIでデータ解析分野をリードすることを次のように例えています。「どんな場合も常に専任のデータサイエンティストのアシスタントがそばにいるようなものです。瞬く間に自分のデータを処理してくれるのです。」 

生成AIに関するクレームの真正性の評価が現在最も困難な課題となっています。販売会社から押し寄せるように送られてくる電子メールはすべてAIの活用を主張していますが、何が本物かを見定めるには、深い技術的理解と根本的な課題の掘り下げが必要です。

Jason Lagneaux
Jason Lagneaux
イントラロックス、サービス/カスタマーエクスペリエンス部門研究開発マネージャー

自動搬送分野においてテキストベースの生成AIは多くの可能性を秘めていますが、生成AIが多面的であることを忘れてはなりません。「生成AIは視覚的なものですが、さらに視覚的にもなり得ます」と、Lagneauxは語っています。「今のところCAD分野にAIはあまり活用されていませんが、やがて追いついてくるでしょう。 大手CAD販売会社がどのようにAIを取り入れて単調な仕事をなくしていくのかを見るのが待ちきれません。近い将来、ひょっとしたら当社のCADシステムのベースモデルを微調整して、我々が長い年月をかけて開発した最良のレイアウト知的財産により、ラインレイアウトを加速させることができるかもしれません。」 

生成AIとその未来をナビゲートする 

この変わりゆくAI技術において、カギを握るのは情報です。何が本物で何が偽物なのかを知ること、あるいは見つけることが、成功への分かれ道となる可能性があります。 

「現在はだれもが、生成AI分野で何が本物で価値があるかを見極めることに、躍起になっています」と、Lagneauxは語っています。「きらびやかなものを追いかけているわけではありません。リスクを取るに値する真の価値を見出しているのです。」


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